デジタル人民元とイラクディナールの相違点
イラクの副首相兼財務相は、イラクディナールの変動相場制を支持すると述べたニュースをご存じですか?
日本は戦後、1ドル=360円の「固定相場制」がしかれ現在は通貨に対する需要と供給によって変わる「変動相場制」へ移行しています。
変動相場制とは、例えばこのような感じです。
1ドルが120円から110円に下がると、「円高」
1ドルが110円から120円に上がると、「円安」
イラクにおける変動相場制のメリットを挙げてみると、
・イラク政府が自由な金融政策を実行できる
・自由な国際間のお金のやりとりが可能になる
ということです。
イラクという国が発展していく今後の未来においては、イラク国内でイラクディナールを還流させるための経済対策を活発にする必要があります。
また、絶対的な石油資源による輸出によって外貨を稼ぐ際にも変動相場制はイラクの経済力を高めるためにベストな選択と言えそうです。
実際に僕たちのようにイラクディナールを大量に保有している投資家にとってイラクディナールがドルや円などのように基軸通貨になる未来が来るのならそれがもっとも歓迎すべき未来のはずです。
現段階ではそのような未来はなかなか想像できませんが、ドル建て支配の世の中から脱出するために中国では、原油取引における「ペトロユアン(石油人民元)」構想を進めています。
僕は、近い将来、中国と同じようにイラクディナールが原油先物市場で順調に取引高を増加させる未来を予想しています。
ペトロユアン(石油人民元)構想の説明に入る前に、中国の人民元が基軸通貨になる条件や戦略をどう描いているのかを見ていきましょう。この足取りからイラクディナールの通貨としての未来が垣間見れます。
基軸通貨になる条件はいくつかありますが代表的な条件を挙げると、
1.自由な取引がされて交換性が確保されていること
2.経済・貿易の規模の大きさ
3.国内金融市場の規模の大きさ
4.信頼性の高い国内の中央銀行の存在
5.強い軍事力の保有
こうした条件を人民元はクリアしているように見えますが、中国では為替市場や国際間取引に規制がしかれており、ドルを超えるような自由な国際的な取引に使われる通貨としてふさわしくない見方が根強いのが事実です。
この事実を中国も理解していて、「デジタル人民元」という新しい枠組みで主に新興国で急速に広まっていく可能性があります。中国が推し進める「一帯一路プロジト」の取引・決済でこのデジタル人民元を普及させようと企んでいる事実は、今後、経済の主戦場がアジアとなることを歴史的に深く理解している研究者や評論家にとっては既定路線の事実。
一帯一路プロジェクトとは、中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる「陸路」と中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ「海路」の二つの地域を合わせた巨大経済圏を作るプロジェクトの総称です。
そしてもうひとつのプロジェクトが、「ペトロユアン(石油人民元)構想」です。
現在の世界的な原油の取引はドル建てですが、中国は上海で人民元建ての原油先物市場を2018年3月に開設しています。すでにイランやロシアとの間では、原油の取引を人民元建てにするように働きかけていると言われています。
そして、中国の人民元建て国際銀行決済システム(CIPS)を構築することで一帯一路における経済取引と原油取引に際してデジタル人民元で決済を促すことで前述の基軸通貨の条件をドルよりも整合的に満たすことで基軸通貨の座を淡々と狙っていることがうかがえます。
イラクが中国のように国際銀行決済システムを構築している訳ではありませんが、原油取引に関しては中国と同じように自国の通貨で(イラクディナールで)取引できるような戦略を今後、策定することは十分に考えられます。なぜならイラクの主要貿易品目は原油だからです。
イラクの原油輸出先のお得意様は、人口増と経済発展が著しいインドです。
インドは、イラクから原油を輸入し、国内で精製された後、原油製品を輸出しています。
輸入品目第一位も輸出品目第一位も原油であり、インドとイラクは切っても切れない蜜月関係にあります。
このようにインドとイラクの関係性をみると現在の原油取引におけるドル決済からイラクディナール決済になる可能性はまったくもって0%であるはずがないと僕は考えています。外国為替市場で見たインド・ルピーは短期的には決して安心して保有できる通貨ではないからです。
もちろんしばらくの間は、これまで通りドルが常用されると思いますが…。
イラクの国内情勢の安定によるイラクディナールの還流や原油取引による取引通貨の行方などイラクディナールの価値高騰の可能性に際する好材料はたくさんあり、今後もどんどん増えていくはずです。
あなたは、イラクディナールの未来をどのように想像していますか?